STOPDAPT-2
STOPDAPT- 2のコメントを書けず、悶々としていた。
先行研究のSTOPDAPT試験では,everolimus溶出ステント留置後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)期間を3ヵ月に短縮する治療戦略の安全性が示されている(有効性は示せなかった)。今回はさらにDAPT投与期間を短縮して1ヵ月とし、DAPT 12ヶ月投与と比較したランダマイズド試験だった。
主要エンドポイントは,12ヵ月時の心血管および出血イベントの複合エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,ステント血栓症,脳卒中,TIMI出血基準の大出血または小出血)であった。最近ではイベント発症率が低いため、安全性と有効性を合わせた複合エンドポイントが使用されていることが多く解釈に注意が必要である。
登録症例は3,009例で、主要エンドポイントの発生率は、1ヵ月DAPT群が2.4%、12ヵ月DAPT群が3.7%であった(HR:0.64、95%CI:0.42~0.98、非劣性p<0.001、優越性p=0.04)。*非劣性マージンは50% (非劣性マージンは高めの設定)
副次エンドポイントの死亡、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症の発生率は、1ヵ月DAPT群が2.0%、12ヵ月DAPT群は2.5%であった(HR:0.79、95%CI:0.49~1.29)。非劣性p=0.005、優越性p=0.34)。
同じく副次エンドポイントのTIMI出血基準の大出血または小出血の発生率は、1ヵ月DAPT群が0.4%、12ヵ月DAPT群が1.5%(HR:0.26、95%CI:0.11~0.64、優越性p=0.004)。
これは恐らく予想された結果だった。すなわち恐らく出血は減るが、血栓症はもともと発症率が低いし、検出力が低いので優越性は示せない。日本の研究はサンプル計算に問題があり、しばしば検出力不足と海外にたたかれてしまう。実際、その後発表されたTWILIGHT試験の方が脚光を浴びたのはもったいないとしか言いようがない。しかし、それでも韓国のSMART-CHOICE 試験がSTOPDAPT2試験 と同時に発表され、アジアからのデータと一蹴されずにすんだことは良かった。
それではこれで全ての症例が1か月DAPTで良いかというと筆者は違うと思っている。本試験は1万人リクルートしているが、登録に至ったのは3000名である。また、特に医師の判断と患者の意向で登録に至らなかったのが3000名いることも注意が必要だろう。一連の試験で言えることは、ステントの性能が向上し、DAPT期間を短くできる患者がいる、ということであり、全ての患者に一律に当てはまることではない。
それでも世の中の流れを変えたこの研究は素晴らしく、京大らしい研究だった。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2736563