臨床研究を語る

主に循環器の臨床研究について紹介します

京都大学からSGLT2 阻害薬DECLARE TIMI 58試験とSTOPDAPT2試験

ACC 2019 学会記
DECLARE試験とSTOPDAPT2試験

 

 

 

今回のアメリカ心臓病学会で特に楽しみにしていたのが2名の日本人医師によるLate Breaking Clinical Trialの発表である。まず口火を切ったのは京都大学医学部附属病院加藤恵理先生だった。加藤先生は新進気鋭の女性医師でハーバード大学 TIMI Study Groupに留学した唯一の日本人医師で有名だ。

 

加藤恵理先生の発表はDECLARE-TIMI 58の心不全サブ解析であった。SGLT2阻害薬の大規模臨床試験のうち初めてのEFによるサブ解析である。HFrEFをEF<45%と定義し、HFrEF 以外と比較した。結論は以下の通りであった。

 

ダパグリフロジンはEFに関わらず広い患者層で心不全入院を抑制
ダパグリフロジンはHFrEF患者で心血管死、全死亡を有意に抑制

 

DECLARE TIMI 58が心不全患者を対象としていなかったこと、HFrEF患者数が少なかったこと(671人)を指摘される声もあったが、45%の心血管死、41%の全死亡抑制という圧倒的な結果となんともインパクトの強いグラフは印象的だった。また、質疑応答ではダパグリフロジンがEFに限らず心不全入院を抑制することを述べていた。今後、SGLT2阻害薬の心不全データが続々と発表される予定ことが予想される。

 

日本人医師があのTIMI Study Groupを代表して発表していることに驚いていたが、納得させるプレゼンテーションのクオリティーだった。全てが論理的で隙がなく、その説得力は圧巻だった。ここまでの実力があり、海外に通用する日本人医師はそうそういない。ましてや、男性社会の循環器内科で女性医師というハンデを覆すには弛まない努力をされてきたことが容易に想像でき、尊敬に値する。若い女性医師が活躍するためにも、日本の循環器界全体でサポートすべき貴重な人材と感じた。

 

尚、TIMIのホームページには今回のACCでのスライドが掲載されているが、加藤先生の発表スライドには京都大学のマークが入っているのを見て胸が熱くなった。日本人医師の一人として誇りに感じる業績である。日本では臨床試験をきちんと学んだ医師はいない。Nが多いことでIFの高い雑誌に掲載できてもきちんとした試験であるかは甚だ疑問である。それに比べると加藤先生は間違いなく唯一無二の存在である。

 

論文 Circulation 同時掲載
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.040130

スライド
http://www.timi.org/uploads/pdfs/ACC.19/Kato%20HF%20ACC%20slides_final_TIMIweb.pdf

ツイッター
https://twitter.com/TIMIStudyGroup

インタビュー
https://cvgk.nl/2019/03/25/klinisch-voordeel-met-sglt2-remmer-in-diabetespatienten-met-hf-onafhankelijk-van-ejectiefractie/

Ciculation on the Run May 27, 2019
https://podcasts.apple.com/us/podcast/circulation-may-27-2019-issue/id1108662449?i=1000439818888


2人目は同じく京都大学医学部附属病院の渡辺ひろとし先生で将来を有望視されている若手医師である。待ちに待ったSTOP-DAPT2の結果が満を持して発表された。STOP-DAPT2はNEJMに掲載される予定らしく詳細はそれを待って報告しよう。